缶詰はスーパーで買いなさい・・・と教えられた1冊
私が小学校6年生ぐらいだったと思う
さくらももこさんの『もものかんづめ』というエッセイが発売された。著者の初エッセイで当時大ベストセラーになったので記憶に残っている方も多いのではないかなと思う。
ちびまるこちゃんの大ファンだった私は、ぜひこのエッセイを読んでみたくて、あちこちの本屋さんに行っては見たものの、どこも完売。
当時の私には「予約する」とか「取り寄せる」等という知識はなく、せっかく貯めた,お小遣いを握りしめて途方に暮れていた。
そんな孫の姿を見て可哀そうだと思ったのか祖母が私に
「『駅向こうの本屋さん』に行ってみたら」と提案した。
『駅向こうの本屋さん』というのは、おじさんが1人で営業している個人の本屋さんなのだが、開いているのか閉まっているのか、よくわからない常に『開店休業』なお店。置いてある本も店主のおじさんも趣味なのだか、何語だかわからない辞書や話にも聞いた事もないようなマニアックな古い漫画本が売っているようなお店。
古本屋ではないようだが、新しい本が売っている印象はまったくない。
今なら変わったお店と面白がれそうだけど、当時は「買いたい本がない、変な本屋」という印象だった。
たぶん無いだろうと思いつつ、ベストセラーだし、もしかしたらあるかもという期待を半分ずつ持って『駅向こうの本屋さん』に行ってみた。
いつも薄暗い店の中で、寝てるのか起きているのかわからない、おじさんがレジに座っている。一通り店の中を見て回ったけど「もものかんづめ」は見つからなかった。
もしかしたら、1冊ぐらいという淡い期待を胸に、眠そうなおじさんに「もものかんづめ」がないか聞いてみることにした。
「あー ウチ、本屋だから」
思い寄らない答えが返ってきて、「いえ、『もものかんづめ』はちびまるこちゃんを描いているいる、さくらももこさんのエッセイ集で・・・」と説明する気にもなれず、その店をあとにした。
今、思えばベストセラーを知らない本屋さんも、びっくりだし、本屋さんに今話題の本の説明をしなきゃいけない状況も、どんなもんかと思うけど、それでもあの本屋さんは営業できてたんだよな・・・と思うと不思議に思う。
それ以来、その本屋に行くことはなかった。
「本屋に缶詰は売っていない」そんな事を教えられた12歳の秋の出来事でした。
今週のお題「人生に影響を与えた1冊」
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